2009年6月 3日 (水)

『松居直のすすめる50の絵本 大人のための絵本入門/松居直』(教文館)

絵本の読みきかせボランティアを地域や学校でされている方、または先生、そして、我が子や孫に絵本を読んでやりたいと思っている方は、ぜひ、この本をお読みになることをおすすめします。

紹介してある絵本の数々にも納得しますが、何よりも、「絵本を読むとはどういうことなのか」ということが親切丁寧に書かれています。

絵本は子どもだましの絵空事なんかではないのだということが、しっかりと書かれています。

福音館書店の松居直氏といえば、絵本に少しでも興味が出て勉強をした方なら、だれでも知っている超有名人かもしれませんが、そうでなくとも、かつては、1人の父親であったという立場から意見を述べられているので、とても親しみやすく読めます。

読みながら、どの絵本も紹介されるべき素晴らしい絵本ですが、わたしなら、あの絵本を紹介したい!とか、あの絵本が入ってないのは残念!とか、思いもしたので、いつか、わたしなりの、「おすすめ50冊の絵本」を書きたいなぁなどと思ったりしました。

そうなるには、わたしが紹介して、読者が納得するだけのわたしの存在が必要なわけですが。笑

まぁ、それは、また、別のはなし…ということで。。。

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2009年6月 1日 (月)

『本所深川ふしぎ草紙/宮部みゆき』(新人物往来社)

こちらも、江戸を舞台にした、短編集。

「片葉の芦」
「送り提灯」
「置いてけ堀」
「落葉なしの椎」
「馬鹿囃子」
「足洗い屋敷」
「消えずの行灯」

の、7編。

読みながらふと思ったのは、ささやかな、小さな人の心遣いや切なさというものは、日々の忙しさの中では、出会っていても見過ごしたりしているものかもしれないけれど、それを掬いとって読者の目の前に、

「ほら、これ」

と、涙を流させる役割を、作家はしているような気がしました。

どんなけなげさも思いやりも、通じない人には決して通じないこともあるし、気づいていても気づかないふりをすることもあるかもしれません。

それを、でも、ほら、人ってこんなにも愛しいものだよと、提示できる作家、少なくとも、この人はそうだなぁと思いました。

そういう作品を書かなければ。。。

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2009年5月25日 (月)

『あやし/宮部みゆき』(角川書店)

なにげなく立ち読んでいたら、止まらなくなってしまい、購入…。

宮部みゆきさんの本は、どれもおもしろいですね。。。

江戸を舞台にした、ホラー短編集です。

居眠り心中
影牢
布団部屋
梅の雨降る
安達家の鬼
女の首
時雨鬼
灰神楽
蜆塚

の、9編。

どれも、おもしろかったのですが、わたしは、特に、「足立家の鬼」が好きでした。

さまざまないきさつから、商家へ嫁ぐことになった、女中あがりの娘が、病で伏せている姑の世話をしながら、彼女の思い出話を聞くというもの。

天涯孤独に育った娘にしてみれば、他の人ならば、おあいそであいづちを付く程度の話しでも楽しくて仕方がない。
そんな嫁を見て、姑は、
「お前は本当に孤独に育ってきたんだねぇ」
と、つぶやく。

そして、ある日、姑の口から、不思議な「鬼」の話しを聞くことになる。


姑が若い頃、魅入られたように一緒に暮らした「鬼」がいた。
「鬼」は、恐ろしい姿はしておらず、弱々しげなやせ細った若い男の姿をしていた。
「鬼」を穢れとして扱う村人たちこそが、「鬼」だと、姑は僧侶や地主に言い、村を出る。

「鬼」は、ただ、そばにじっといるだけで、姑に縁談がわいても、特に何も言うことはなかった。
やがて、商家へ嫁ぐことになった姑に、鬼はただ一生そっとよりそっているだけだった。

しかし、姑の背後に常にいる「鬼」の姿は、見える者には見える。
だれの目にも同じに映るのではなく、ある者には、おそろしい形相のおぞましい存在として映る。
姑の夫は、鬼の気配だけは分かるようだったが、特に怖がるふしもなかった。

商い相手は、「恐ろしい鬼」を見ては取引を拒み、「恐ろしくない鬼」を見れば、そのまま商いをともにやっていってくれる。
そんなわけで、姑が嫁いだ先の店は、良い相手ばかりと商売し続ける事ができ、たいそう繁盛していった。


人の目に映る「鬼」は、自分がふと垣間見てしまう、自分の本当の姿なのかもしれない。

自分の腹が黒ければ、すべての人間が腹黒くおそろしいことをたくらむような人間に見えてしまうのではないか。

自分が真っ正直に生きていれば、周囲の人間がすべて善良な人間に見えてしまうのではないか。

どちらも危ういことだが、しかし、もし、自分がどちらかの「目」を持っているのだとすれば、後者の方がいいと思う。

人を信じられず、人を裏切り欺いて生きるよりは、人を信じて裏切られることがあっても別にいいのではないかと思ったりする。

本当の意味で、どちらが自分の心を傷つけているかを思えば。

などと、思いをめぐらせてしまうホラーでした。

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2009年2月11日 (水)

『べっぴんぢごく/岩井志麻子』(新潮社)

いや~、もう~、何っていうか、志麻子さんの本は、いつもすごいどろどろしててすごいとしか言いようがありません。

でも、この作品、たとえば、江国香織さんが書かれたら、何となく草食動物的な淡々とした恋愛小説になるような気がするし。
村上春樹さんが書かれたら、シュールかつ何だかおしゃれな恋愛小説になりそうな気もするし。

素材をどう料理するのかが、その作家の個性というのが、改めて感じられる小説なのでした。

ん?

ってゆうか、これは恋愛小説じゃないな。

全然ちがう。

何っていうのだろう~。女の一代記?

桜庭一樹さんの『紅朽葉家の~』を、どろどろした筆致で書くとこういう雰囲気になったりするのかな?

まぁ、とにかく、謎の過去を持つ、1人の絶世の美女が「存在するというだけで」周囲を不幸に巻き込んでいくという、壮絶な物語なのでした。

傾城の美女?

そんな上品な言葉では表現できません。

岩井志麻子さんの作品に出てくる美女たちは、どの人もどの人も不幸のどん底へ落ち込んでいくので、読みながら、ものっすごいネガティブな気持ちに侵食されていきます。
でも、何っていうのか、落ち込むというのではなくて、ネガティブなパワーに満ち溢れるというか…で、読み終わってから、

「いや、いかん!こんな女になってはいかん!」

と、思い直し、日向を見るために冷静になろうとする自分がいるというか、そんなパワーを感じるのでした。

ネガティブさを提示して、逆に人をポジティブにする、すごい作家なのかもしれません。

わたしは、おもしろいと思うので、たまに読みたくなる作家さんです。

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2009年2月 5日 (木)

『ビロウな話で恐縮です日記/三浦しをん』(太田出版)

三浦しをん、ついつい読んでしまいます。

この人のエッセーは、もう、一人称が、「俺」ってなってるし。

いいのですか?

う○ことか、普通に書いてるし。

いいんですか?

同年代の女性として、一抹の不安を覚えつつ、しかし、やはり、おもしろいので読んでしまうのでした。

公共の乗り物に乗っている時に、笑いをこらえきれずに、でも、声をたてて笑ったら変質者と思われてもいけないので、笑いをこらえて笑っていたら、どうやら、顔が、

「にたぁ」

って、感じになってたみたいで、向かいの席の女子高生がじっとわたしの顔を見て、目があったら、あわてて携帯電話を打ち始めました。


「ちょーきいてーまじきもいおんながむかいのせきにおるしー」

とか、打って、友だちに送信したのかもしれません。

ってゆうか、今の女子高生は、ちょーとかきもいとかももう言わないのかもしれません。

どうやって読むのかも分からないアラビア文字のような、あの文章なのかもしれません。

でも、別にいいや。

エッセイおもしろかったから。

しをん氏のエッセーは、何というか、たまに食べたくなる濃厚とんこつラーメンみたいな感じがします。

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2008年10月 7日 (火)

『杉浦日向子の食・道・楽/杉浦日向子』(新潮社)

きりっとして、無駄なものが一切なく、その人の暮らしがそっと覗き見られる感じのエッセイ集。

お酒の好きな杉浦さんが、お酒とそれにまつわるエピソードをひっそりと書き綴った感じ。

押し付けがましくなく、さりとて、遠慮深すぎもせず。

粋です。

かっこいい。

杉浦さんが数年前に急遽された時は本当に残念でした。

けれど、騒ぎ立てもせず、このエッセイのように、そういうもんさとサラッとした最期のような気が勝手にしました。

大げさではないけれど、一本芯の通った女性だなぁと羨望のまなざしを送るのみ。

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2008年9月19日 (金)

『追憶のハルマゲドン/カート・ヴォネガット』(早川書房)

たま~に読みたくなる、早川書房のSF小説。

特に、浅倉久志さんの訳。

なぜか、この人の訳したSFはおもしろい!と、10年以上も前から、SF読むなら浅倉って思っているわたしなのでした。

この作品集は、急死してしまった、才能ある作家カート・ヴォネガットの追悼作品集ともいうべき1冊です。

前半は、ヴォネガットの息子、マーク・ヴォネガットの父への思い出原稿。

そして、後半が、未発表の短編数編。

どれも、戦争時代の兵士経験をもとにして書かれているようで、その重さに耐えられない気持ちになる事もありました。

でも、あくまでもフィクションとして、最後に大どんでん返しを用意してある手腕にうなるばかり。

大どんでん返しというとどんなどんでん返しかと思われるでしょうが、カート・ヴォネガットの大どんでん返しは本当の本当に「大」どんでん返しです!

読んでて、「そっち行くかー!!!」と、膝をたたきたくなります。

あ~、すごいなぁ…と、感心してばかりのわたし…。

センスがすごい。

そして、そのセンスを実際に表現しきっていることがすごい。

プロ。

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2008年9月13日 (土)

『幕末の明星 佐久間象山/堂門冬二』(実業之日本社)

何でこの本を読もうと思ったのか、自分でも分かりません。

何だか急に佐久間象山の事を知りたい!と、思い立ったのでした。

幕末が好きだから?

よく分かりません。

人間ドラマよりも、史実に重きを置いた筆致なので、エキサイティングさはないなぁ~という感想。

そういう事実があったのか、または、あったのだろうなと思いつつ冷静に読む感じ。

でも、佐久間象山の事はよく分かった。

なぜ、急に彼の事を知りたくなったのか、自分でもさっぱり分からない衝動でしたが。

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2008年9月 4日 (木)

『下北サンデーズ/石田衣良』(幻冬舎)

何年か前にドラマでやってたのがおもしろかったので、ちょっと原作を読んでみようかなと思ったのでした。

もう10年以上も前になりますが、劇団というものに入っていたわたしには、とても共感できる部分と、そうでもない部分と。

何よりも共感できるのは、ヒロインたちの、「みんなと一緒に何かを作り上げる喜び」だと感じました。

部活的な時間(と書くと、語弊があるかもしれませんが)って、おとなになると経験することがほとんどないので、こういう青春的な時間ってすごく貴重に感じます。

劇団って、大きくなればどうなのか、大きくなった経験はしたことがないので(笑)分からないのですが、一生、何だか集団でランニングしたり、筋トレしたり、大きな声で歌ったりするような、変なハイな状態が続くような気がします。

もちろんしんどいことの方が多い気がするけれど。

でも、本番の輝きが何もかもを浄化してくれる感じ。

そういう感覚が、この小説には良く描かれていると思いました。


小説に出てくる脇役の小劇場系劇団や、演出家、脚本家、俳優たちが、現在の人気俳優や脚本家たちの名前をもじってあって、分かる人は分かるって感じで笑えます。


石田衣良さんって、プロの小説家なんだなぁって思いました。

この人が描けない作品はないんだろうな。

でも、この人だけにしか描けない世界はどの作品なのか知りたい。

まだ、他の作品をたくさん読んでもいないので言えないけれど。

ファンの方に、「これは絶対におすすめ!」という作品を教えてほしいです。

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2008年8月28日 (木)

『幽談/京極夏彦』(メディアファクトリー)

幽霊解体新書みたいな感じです。

「幽談」というタイトルにも関わらず、幽霊は出てこない…と書いてしまったら、ネタバレですね。
ごめんなさい。

でも、京極ファンなら、その展開は容易に読めるとは思います。

京極さんは、妖怪や幽霊やあやしいものを素材にお話しを数多く書いておられますが、実は、本当に幽霊や妖怪が出てくる話しはないと言っても過言でもないと思うのです。

京極堂シリーズに出てくる、有名なキメセリフ、「不思議なものなど何もないのだよ」に、それは象徴されていると思います。

この本には、

「手首を拾う」
「ともだち」
「下の人」
「成人」
「逃げよう」
「十万年」
「知らないこと」
「こわいもの」

の、8つの短編が収録されています。

わたしは、中でも、「下の人」がこわかった。

ベッドに寝転んでこれを読んでいたので、余計にぞぞぞぞぞ~っと、きました。
性格に言うと、「こわい」というのではなく、「不快感」というのが正しい感覚かもしれません。
主人公の女性の、淡々とした「不快感」への反応がとても素晴らしい。
人は、日常に相容れないものを見つけた時、実は、淡々とこの女性のような対応するのではないでしょうか。


「逃げよう」
も、かなりおもしろい作品でした。

小学生の少年が、ひたすら、「何か」から逃げ続ける話しなのですが、その何か、と、少年の、果てしなく相容れないのに、果てしなく腐れ縁のような感じが、とても不幸な漫才のようで、薄気味悪いのに、なぜか、笑ってしまうような、変な感覚がありました。

京極さんの作品は、こういう妙に一人ボケツッコミのような変なユーモアがあるなぁと思うのでした。

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